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LGBTQ+・多様な性のあり方

世の中には男と女しかいない??異性を好きになるのが当たり前?
どこからが恋愛、憧れ、友情?!
性のありかたは「グラデーション」だと言われています。これは「境目がはっきりしていない」という意味です。好きというキモチにおける恋愛や友情の境目も、男の子と女の子の境目も、実ははっきりとしたものではありません。

「”私”って言いたくない」「学ランが嫌」「女だけどサッカーが好きなのって変?」「男だから泣くな、女だから優しくて当たり前」…などなど、性別のらしさの押しつけに、キュークツな思いをした人は少なくないはず。

1.性のあり方はグラデ―ション
2.だれにでもある性の3要素
3.LGBTQ+とは?
4.自分/身近な人がそうかも?と思ったら
5.同性カップルの権利と同性婚
6.学校現場での対応

1.性のあり方はグラデーション

想像してみてください。
男性のアイドルが好きな女性、よくいますよね?その人のことを考えるとドキドキして、もしも目の前にあらわれたら本当に恋に落ちてしまいそうなんてこともあるかもしれません。
女性アイドルが好きな女性もよくいます。やはり目の前にその人が現れたら、ドキドキするにちがいないでしょう。触れたいとか、ずっと見ていたいとか、名前を呼んでもらいたいとか、そういったことは恋愛に近い感情のように思えます。

アイドルでなくても、大好きな友達との別れ際にとても寂しくなったり、年上の先輩に胸がドキドキしたりということは、意外とあるのではないでしょうか。恋愛感情とあこがれ、友情というのは意外と線引きがしづらかったりします。

ある人の好きは、同性に向かいます。ある人の好きは、異性に向かいます。好きの中身も、特別の中身も、関係性によって少しずつちがいます。ずっと姿を見ていたいのは、こちらに向かって笑ってほしいのは、手をつないだり、キスやセックスをしたいのは、だれでしょうか。好きの形はひとつひとつちがっていて、ひとつひとつかけがえのないものです。

性のあり方は一人ひとりちがっていて、それが正解

「自分は体も心も女性だけど、ボーイッシュな格好が落ち着く。付き合うのは男性がいい。」
「体が男性で、Xジェンダーで、恋愛感情を持たない。」
世の中には様々な人が存在します。どれが正解という決まりごとはありません。
あなたはあなたの性のあり方を大切にし、それを他の人から否定されないという権利があなたにあります。

2. だれにでもある性の4要素

性のあり方には4つの要素があると言われています。

①身体的性(からだの性のつくり)
②性的指向(恋愛感情や性的欲求を抱く性別、どんな性別の人にひかれるか)
③性自認(自分で深く実感して生きていこうとする性別)
④性表現(服装やしぐさ、言葉遣いなど、どのように自分を表現するか)

①身体的性
私たちのからだの性別は、性染色体(DNAの中の一部分)やホルモン、性腺や外性器の形状などによってオスやメスであると判定されます。大抵の場合、生物学的な性は生まれたときに医療従事者により割り当てられ、それに沿って私たちの人生はスタートします。(男性器があれば男の子、女性器があれば女の子といった風に。)

⇒②性的指向
どんな性別の人を好きになるのかを示す概念です。多くの人は異性に惹かれるヘテロセクシュアルとされていますが、中には同性に惹かれるゲイレズビアンの人、好きになる相手の性別はあまり重要でない/同性にも異性にも魅力を感じるバイセクシュアル(パンセクシュアル)の人もいます。恋愛や性愛に関心の薄いAセクシュアル(エイセクシュアル・アセクシュアル)・アロマンティックと呼ばれる人たちもいます。

恋愛対象と性愛対象を別に分けて考えるという考え方もあります。

思春期は様々な感情を経験する時期

思春期には、異性の人も同性の人も好きになることは(そして好きにならないことも)よくあることです。それはあなたの性質としてずっと続くこともかもしれないし、一時的なことかもしれません。自分がどの人に惹かれるか、すぐにははっきりしないかもしれないし、ゆらぐことがあるかもしれません。そして、それはとても普通のことです。

⇒③性自認(ジェンダー・アイデンティティ)
自分で深く実感して生きていこうとする性別のこと。自分がどのような性別なのかという内なる感じ方のことをいいます。いわゆる「こころの性」と称されることもあります。性自認と生まれた時に割り当てられた性別が異なったり、生まれた時に割り当てられた性別とは異なる性別で生きようとする人たちをトランスジェンダーと言います。また、生まれた時に割り当てられた性別と性自認が一致している人のことは、シスジェンダーと言います。

生まれた時に割り当てられた性別が男性で、性自認が女性の人をMTF(エムティーエフ/Male to Female/トランス女性)、生まれた時に割り当てられた性別が女性で性自認が男性の人をFTM(エフティーエム/Female to Male/トランス男性)と呼ぶこともあります。また、男女どちらともつかない、もしくはどちらの要素を持っている人の性自認を「Xジェンダー」「ノンバイナリー」と表現することもあります。

トランスジェンダーの人の中にはホルモン治療や性別適合手術によって、本来あるべき身体イメージを手に入れようとする人たちがいます。このような医学的処置を受けるためには専門の精神科をおとずれて「性同一性障害」という診断を受けることがガイドラインで求められています。いっぽうでホルモン治療や手術をせずに、自認する性別で暮らしている人もいます。

「性同一性障害」という言葉については「精神疾患かどうか」という国際的な議論が現在進んでいて、2022年に改訂されるWHOの国際疾病分類(ICD-11)では、性同一性障害(Gender Identity Disorder)は「精神疾患」から外れ、「性の健康に関連する状態」という分類の中のGender Incongruence(性別不合/日本の厚生労働省による仮訳)という項目となりました。

性自認は必ずしも100%男と100%女の二種類だけがあるわけではなく、人によっては揺らいだり、どちらでもないと感じたりします。
また、性別への違和感をもつ時期は幼少期という人が圧倒的に多いですが、ばらつきがあります。思春期は違和感が強烈に強まり、苦労を感じる人が多いようです。

⇒④らしさの性(どのように性別を表現するか、ジェンダー表現とも)

服装やしぐさ、言葉遣いなどどのように自分を表現するか。必ずしもからだの性、好きになる性、こころの性と連動しているわけではありません。その日によってゆらぐ人もいます。

3. LGBTとは?

近年、「L」レズビアン(女性同性愛者)「G」ゲイ(男性同性愛者)「B」バイセクシュアル(両性愛者)「T」トランスジェンダー(出生時に割り当てられた性別が心の性別と異なる人)という言葉の頭文字を合わせた「LGBT」「LGBTs」という言葉が知られてきています。
LGBTの人たちは性自認や性的指向のあり方が多数派とは異なるという意味で、狭い意味でのセクシュアル・マイノリティと呼ばれることもあります。

「LGBTQ」とも言われることがありますが、この「Q」とは「Queer(クィア)」もしくは「Questioning(クエスチョニング)」という2つの言葉を表しています。
「Queer(クィア)」とは「変わった人」が元の意味とする、セクシュアルマイノリティ全般を表した言葉です。「Questioning(クエスチョニング)」とは、自分の性のあり方をはっきりと決められなかったり、わからない人、または決めたくない、決めないとしている人のことを言います。

でも、これまで見てきた通り性のあり方はグラデーション。一人ひとり、好きのカタチも自分らしさもちがいます。LGBTという概念はあるけれど、LGBTの人と、そうじゃない多数派の人がいるのではなく、だれもが「性の多様性」というパズルの1ピースというわけです。みんなそれぞれ当事者というつもりで、性のことを考えられるとよいでしょう。

最近では、性的マイノリティに限らず、性的指向と性自認・性表現を表す言葉として、SOGIE(ソジ―:Sexual Orientation & Gender Identity & Expression)という言葉が使われるようになってきました。

こんな人が世の中にはいるよ

LGBT当事者として発信や当事者支援をしている人もいます。地域や学校で、当事者のグループやサークルもあったり、ブログやSNS、Youtubeで発信している当事者の方もいます。大学でジェンダー・セクシュアリティについて学べるところや、LGBTの就活支援をしている団体もあるので興味のある人は探してみてはいかがでしょうか?

たとえばこんな方!
○遠藤まめたさん(FTMトランスジェンダー)
LGBT支援をしています。
著書『先生と親のためのLGBTガイド:もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版)

ブログ: http://www.endomameta.com/page2.html
にじーず 10代~23歳ぐらいまでのLGBT(そうかもしれない人をふくむ)の居場所
https://24zzz.jimdo.com/

牧村朝子さん(レズビアン)
タレント、文筆家。「言えないけど話したいこと、聴きます」をテーマに、芸能・執筆・講演活動をされています。

YouTubeやブログなどで発信を行っている当事者の方も今増えています。
ぜひ、探してみてはいかがでしょうか?

4.自分/身近な人がそうかも?と思ったら

自分の性のあり方に疑問をもったら?

思春期には、異性の人も同性の人も好きになることや(そして好きにならないことも)、自分の性別に違和感を覚えるのもよくあることです。そして、それはあなたの性質としてずっと続くこともかもしれないし、一時的なことかもしれない。すぐにははっきりしないかもしれないし、ゆらぐことがあるかもしれない。そして、それはとても普通のことです。
そして、思春期に起こる変化として、ホルモンという体のなかの化学物質が、増えたり減ったりします。そのため、急にハッピーになったり悲しくなったり、激しい感情を感じて、思い悩んでしまうこともよくあることです。

他の人へのカミングアウト(自分の性のあり方について、誰かに打ち明けること)は、「しなければいけない」ものではありません。いつ、だれに、どの部分を打ち明けるか、あなた自身が決めていいものです。

悲しいことですが、多様な性についての学ぶ機会が十分にあるとは言えない社会の中で、無理解や偏見がある人がいるということも事実です。相手との関係性の中で、「この人なら言えそう」と信頼できる人が見つかることを応援しています。

身近な人の性のあり方が気になった時は?

相手に「お前、ゲイ?」とか、「オカマなの?」と聞くことは、相手を傷つけることになるかもしれません。自分の性のあり方をどのくらい打ち明けるのか決めるのか決めるのは、その人自身です。友達だから、家族だからと言って、言わなければいけないというものではありません。
そして、相手はもしかしたらあなたにカミングアウトしていいのか迷っているかもしれません。もし、そのような状況だとしたら相手はあなたが「LGBTフレンドリーな人」がどうかを見極めています。相手の性のあり方を知りたいと思った時、その人があなたに打ち明けやすくするための工夫として、「LGBTフレンドリーな人」だと思ってもらえるような言動を取ることを心がけることができます。

LGBTフレンドリーチェック

  • 「ホモ」「ゲイ」「そっち系」などの言葉を笑いを取るために使用しない
  • 「男/女なんだから〇〇しろ」などの言葉を使わない
  • L・G・B・T・Xのそれぞれの違いが説明できる
    ⇒わからなかった人は「性の3要素」②性的指向③性自認を参考にしてみてください。

このフレンドリーチェックはあくまでも一例なので、もっと詳しく知りたい人は調べてみてください。

こんな言い方に気をつけよう!

<用語の使い方>

  • レズビアン→〇ビアン ×レズ
  • ゲイ→×ホモ、オカマ、オネエ系、そっち系
  • バイセクシュアル→×両刀使い
  • トランスジェンダー→△性同一性障害、×オカマ、オナベ、おとこおんな
    ※当事者の中には、これらを自称している人もいますが、差別的なニュアンスを含む言葉であり、相手に対して使う際には注意が必要です

<たとえば、こんな言葉に傷つく!>

  • 男の子同士でいちゃいちゃするな、気持ち悪い!
  • 男なら泣くな!
  • もっと女の子らしくしなさい。
  • 周りにはそういうやついないから関係ないと思うけど。
  • 同性婚はいいけど、その子どもがかわいそう。

…LGBTという認識がない人でも、言われるといやなこともありますよね。

アライって知ってる?
アライ(Ally)、正しくはストレートアライ(Straight Ally)と言います。自分は、LGBTでは無いけれどLGBTの人たちの活動を支持し、支援している人たちのことです。

 

カミングアウトされたらどうしたらいい?

カミングアウトとは、自分の意志で「自分の性のあり方」を伝えること。

話をきく時に大切なポイントとして、

  • 決めつけない(「ゲイは~」「トランスジェンダーは~」とくくらず、その人の気持ちを大切にする)
  • 当事者の子と一緒に悩んだり、一緒に考えていくこと

カミングアウトされたあなたに1番お伝えしたいのは、「その事実を本人の許可なく言いふらす(「アウティング」と言います)のはやめよう」ということです。
きっとその人は、あなたが信頼できる相手だと判断したからあなたにカミングアウトをしました。しかし、あなたから、まだ話をするタイミングを見定めている親や友人などに勝手にそのことを伝えられたら、その人は安心して暮らせる場所が壊されたような気持ちになって、とてもショックを受けるかもしれません。

カミングアウトする相手やタイミングを1番考えて、1番良い方法を探しているのは本人です。あなたは本人のことを尊重して勝手に他の人には話さないようにしましょう。
そして、もしかしたら、あなたがだれかにカミングアウトされたことがショックだったり、ひとりで受け止めることが難しくて、だれかと一緒に考えたいという時もあるかもしれません。そんな時には、電話相談など守備義務がまもられるところに話してみるのもいい方法です。

よりそいホットライン 0120-279-338(フリーダイヤル つなぐささえる)
ガイダンスの後で4番をプッシュするとセクシュアルマイノリティ専門のラインにつながります。
24時間 全国どこからでも通話料無料。
携帯電話・PHS・公衆電話からもかけられます。

5.同性カップルの権利と同性婚

「法律上は家族ではないが、ずっと一緒に暮らしていた同性のパートナーが突然倒れた。病院では親族しか面会できなかったため死に目に会えず、葬式も親族としてではなく友人としてしか参列できなかった。一緒に暮らしていた家はパートナー名義だったため、パートナーの妹に相続され、家を追い出されることになった。」

同性同士のカップルでは法律上は家族とみなされていないため、このような不利益を被ることもあります。

同性婚が認められたことにより、このような不利益が解消された国もありますが、現在の日本では同性婚が認められていないため、以下の方法で不利益を回避することもできます。しかしこの方法も万全ではなく、強制力や効力をもたないときもあります。また、一部の地域でしか行われていない制度もあります。

養子縁組 : 親子や兄弟として家族になることができる。
遺言状の作成 : 死亡した際の葬儀の手配や相続についてを示しておくことができる。
任意後見制度 : 自分の判断能力が不十分になった場合、自分の契約などを信頼する相手に委任することができる。
パートナーシップ証明書 : 2人が交際関係にあることを記した公的な書類。事実婚状態であることを証明することができる。これを持っていない場合は、現状、同性の家族は親族とは認められていない。

【同性婚の現状は?】
日本ではまだ認められていませんが、世界的には認められている国も存在します。オランダが世界で最初に同性婚を認め(2000年)、2017年1月現在では27ヶ国で同性婚が認められています。

日本では2015年に日本で初めて東京都渋谷区で同性パートナーシップ条例が制定され、2018年現在は合計7つの自治体で同様の条例が制定されています。

6.学校現場での対応

2015年4月30日に発表された文部科学省の「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」には、

性同一性障害を含む性的マイノリティとされる児童生徒の悩みや不安を受け止め、教職員の適切な理解を促進することが必要

とされています。

また、2017年に最終改訂された文部科学省の「いじめ防止等のための基本的な方針」の中でも、いじめの防止のための措置として、

性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するいじめを防止するため,性同一性障害や性的指向・性自認について,教職員への正しい理解の促進や,学校として必要な対応について周知する。

教職員は性的マイノリティに正しく理解し、学校として必要な対応をする必要があります。もし、あなたやあなたの友達・家族が性的マイノリティで、教育現場において他の生徒や教職員から不当な扱いを受けている場合は、教職員や教育機関に改善を求めることは当然の権利なのです。

参考:『親と先生のためのLGBTガイド:もしあなたがカミングアウトされたなら』遠藤まめた著(合同出版)

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