20~30歳代の若い女性の発症者が増えてきている子宮頸がん。
ワクチンって大丈夫? 検診って必要? という人も、
まずは知ることから始めましょう!
- 子宮頸がんとは?
- HPVワクチンとは?
- 子宮頸がん検診では何をするの?
- 心配な時、相談したい時は?
1.子宮頸がんとは?
子宮のがんには、「子宮頸(けい)がん」と「子宮体がん」があります。
子宮の入口の管のようになっている部分(子宮頸部)に生じるがんを子宮頸がんといいます。
子宮がんの約70%は子宮頸がんです。
最近は、20~30歳代の若い女性の発症者が増えてきています。
日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しています。
子宮頸がんの原因はHPVというウイルス
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染することが原因であることがわかっています。このウイルスは性的接触・性行為により子宮頸部に感染します。
HPVは、男性も女性も感染するどこにでもいるウイルスです。性行為の経験がある女性の半分以上は、一生に一度は感染する可能性があるといわれています。
HPVに感染しても、約90%の人は自分の体を守ろうとする免疫の力で、ウイルスが自然に体の外に出ていきます。しかし、約10%の人はHPVが体の外に出て行かず、長い間ウイルスに感染した状態が続きます。このうち、HPVが感染し続ける一部の女性において「異形成」とよばれるがんになる前の状態(前がん状態)が続き、さらに数年以上をかけて子宮頸がんに進行すると言われています。
コンドームでHPVの予防ができる?
子宮頸がんの原因となるHPVは、コンドームで感染する確率を下げることができます。しかし、HPVは外陰部や肛門などコンドームではカバーしきれない範囲にも存在します。そのため、コンドームだけで子宮頸がんを予防することはできません。
2. HPVワクチンとは?
HPVの感染を予防することにより、子宮頸がんの発症を防ぐ、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン/予防接種)が開発されています。スケジュール通りにワクチンを打てば、ワクチンに含まれているタイプのHPVへの感染をほぼ100%予防できます。日本で認可されている2価・4価のHPVワクチンは 、子宮頸がんの原因となる有害なHPVの約70%を予防できると考えられています。
WHOはHPVワクチンが本当に子宮頸がんの予防に効果的か、また、副作用が起こらず安全に使えるかを確認しています。そして、性行為を経験する前の、つまりHPVに感染する前の10歳代前半に接種をするよう呼びかけています。(WHOのファクトシート日本語訳)
HPVワクチンにより、HPVに感染する人が少なくなり、その結果として、「異形成」とよばれるがんになる前の状態になる人が、ワクチンをしていない人に比べて少なくなることがわかっています。
日本ではHPVワクチンは2009年に使用することが認められ、2013年4月から無料で接種できるようになりましたが、ワクチンを接種した後に様々な症状が起こったという報告が複数あったために、2013年6月より厚生労働省が積極的に接種を勧めることは控えるようになりました。
このような様々な症状の原因がHPVワクチンであるという科学的な証拠は明らかになっておらず、厚生労働省もワクチンと症状の因果関係は否定しています。HPVワクチンが安全かどうかについて、日本産科婦人科学会でも『子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために』というホームページで情報を発信していますので、参考にしてみてください。
HPVワクチンはいつ接種できるの?
HPVワクチンは10歳から接種することができます。無料で接種できる定期予防接種の対象は、小学6年生から高校1年生の女子です。これは、HPVに感染する前、つまり性行為を始める前に接種するのが最も効果が期待できるからです。
現時点で厚生労働省は本ワクチンの定期接種の「積極的接種勧奨」を差し控えていますが、対象年齢の女性は定期接種として接種可能です。
接種は全3回、半年ほどかかります。高校1年生の10月までに1回目を開始することが大切です。詳しくは、お住いの市区町村でご確認ください。
ただし、HPVワクチンを接種すれば、絶対に子宮頸がんにならないというわけではありません。がんになるHPVにはいくつかの種類があり、HPVワクチンで予防ができるのはそのうちの一部の種類だけだからです。そのため、ワクチン接種を受けていても、性行為を経験した後は、定期的に子宮頸がん検診を受けることが早期発見には有効です。
また、接種が推奨されている年齢を過ぎた女性でも、HPVワクチンは有効な場合もあります。それぞれの条件によって違うので、詳しくは、産婦人科の医師とご相談ください。無料で接種できる期間を過ぎた場合、自費で5~6万円ほどの費用がかかります。
HPVワクチンは、男性のHPV感染の予防にも有効で、 定期接種の対象ではありませんが、男性も希望があれば接種することができます(国によっては、男性もHPVワクチンを定期接種にしているところもあります)。 男性もHPVの感染が肛門がん、陰茎がんなどのがんの発生原因となることが分かっています。
2022年からキャッチアップ接種(積極的接種の勧奨停止期間に対象年齢であった女性への無料接種)が行われます。詳細は、厚生労働省のサイトをご覧ください。
3. 子宮頸がん検診では何をするの?
子宮頸がんになっても、最初の時期はほとんど症状がありません。定期的に検診を受けることが病気を早く見つけることに役立ちます。性行為の経験がある20歳以上の女性は、2年に1回、子宮の入り口の細胞を検査する子宮頸がん検診を受けることが勧められています。早期に発見できれば、負担の軽い治療で治ります。
どんなことをするの?
●問診
問診票という質問用紙に、生理がどのくらいの間隔で起こるかや最後の生理はどうだったか、生理痛は強いか、血の量はどれくらいか、妊娠したことがあるかなどを記入します。また、診察室で医師からの質問に答えます。
●細胞診
腟鏡という腟の中がみられるようにする器具を腟の中に挿入し、ブラシなどで子宮の入り口付近を優しくこすり、細胞を少し取り出します。ほとんど痛みは無く、1分程度の短い時間で終わります。採ってきた細胞を検査センターに持って行って、がん細胞やがんになる前の段階の細胞を見つけます。
子宮頸がん検診をすることで子宮頸がんによって死亡する確率が減少することがわかっています。
検診を受けるには?
市区町村で受ける住民検診、自分が働いている会社の検診など、どこで受けるかによって支払わなければならない金額は変わります。市区町村の検診を受けるときは、自分が住んでいる自治体のホームページを見てください。
気をつけた方がいい症状は?
がんが進行してくると異常なおりもの、生理以外の出血(不正出血)、性行為をするときの出血、お腹の下の部分の痛みなどが出てきます。これらの症状があるときは、早めに婦人科の病院に行って診察を受けてください。
4. 心配なとき、相談したい時は?
子宮頸がんは、がんになって早い段階で治療すれば治る確率も高く、また子宮を手術で取らずに治療できる可能性も十分あります。
子宮頸がんの病気の発生の過程は、がんの前の段階である異形成、子宮頸部の表面だけにがんがある上皮内がん、そして周囲の組織に入り込む浸潤がんに分類されます。
がんが進行すると再発する確率・死亡する確率も高くなります。
子宮頸がんの予防には、HPVワクチンを接種すること(一次予防)でがんになる確率を減らし、さらに、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、HPVワクチンで防ぎきれなかった子宮頸がんを早い段階で発見し治療をうけること(二次予防)が重要です。
気になる症状がある場合や、ワクチン・検診について知りたいことがあるときは、早めに産婦人科の医師に相談しましょう。
参考情報:
ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんなどの予防ワクチン)|特定非営利活動法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会
http://www.know-vpd.jp/children/va_c_cancer.htm
子宮頸がん 基礎知識|国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
子宮頸がん|公益社団法人 日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10
子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
知っておきたいがん検診|日本医師会
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/
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