性関係の延長上にある妊娠、出産、そして育児。
性はこれからの人生にかかわる大事なコト。
自分らしいライフプランのために必要なことを考えてみよう!
- 妊娠するまでの流れ
- もし妊娠したかも…と思ったら?
- もし思いがけず妊娠した時は?
- 妊娠する?しない?
- 妊娠しやすい時期ってあるの?
- ライフプランを考えてみよう!
- 妊娠したらどう変わっていくの?
1. 妊娠するまでの流れ
\受精・妊娠について解説した動画はこちら/
2. もし妊娠したかも?と思ったら…
もしも今、少しでも思い当たることがあって妊娠をしたかもしれないと悩んでいるのなら、妊娠検査薬が簡単に妊娠を確かめられる方法です。
今妊娠の結果どうするか決められなくても、早く分かれば早く対処をすることができます。
妊娠のサインって?
代表的な妊娠のサインとして、
- 生理(月経)がいつもよりも1週間以上遅れている
- 基礎体温を測っている場合、体温の高い「高温期」という時期が3週間以上続く
ということがあります。
また、吐き気、熱っぽくだるい風邪のような症状、眠気、胸が張る、乳首がチクチク痛む、おりものが増えるなどの症状が出ることもあります。
妊娠初期におこる吐き気や食欲不振などの症状を「つわり」と言いますが、その期間や程度には個人差があります。
腟からの少量の出血を「着床出血?」(※着床出血とは、受精卵が着床する時にまれに出血することを指します。)と心配になる人もいるようです。
ただ、これらの症状は妊娠していない人にも出ることがあり、個人差があるため、必ずしもつわりのような症状や出血があるからといって妊娠を断定できるわけではありません。
妊娠検査ができる時期に、薬局・ドラッグストアで販売している妊娠検査薬や婦人科・産婦人科を受診し、妊娠を確かめましょう。
妊娠検査薬ってどこで買えるの?使い方は?
妊娠検査薬は、薬局・ドラッグストア等で1000円前後で買うことができます。
検査できる時期は次の月経予定日から1週間後、月経不順のある場合や、前の月経を忘れてしまった場合は性行為から3週間後(検査薬によっては次回月経予定日頃・性行為から2週間後には検査可能なものも。検査薬によって検査可能な期間が異なります)が目安です。
指定の場所に尿をかけて数分で結果がでますが、使用時期と方法を間違えると正しい判定が出ないこともあります。妊娠検査薬の説明書をよく読んで使いましょう。
3. もし思いがけず妊娠をした時は?
妊娠検査薬で陽性(妊娠の可能性あり)と出た場合は、すぐに産婦人科・婦人科で正確な診断をしてもらいましょう。
子宮外妊娠といって、異常妊娠の場合でも陽性反応がでてしまったり、流産の可能性もあるので、必ず受診して確認しましょう。
妊娠検査薬では陰性だったけれど、生理(月経)が1週間経ってもまだこない、妊娠の不安がある場合も産婦人科・婦人科を受診するのが確実です。
妊娠をしている場合、
①赤ちゃんを産んで育てる
②中絶をする
③産んで施設に預けたり養子縁組で他の人に育ててもらう
という選択肢があります。
赤ちゃんを育てていくためには、毎日のお世話、仕事、生活費、住む場所はどうするか、などについて、信頼できる大人も含めて現実的に考えて決めていくことが重要です。
ひとりで子育てをしている人に対しては、月に約4万円をもらえる児童扶養手当や、自立のめどが立つまで親子で住むことのできる母子生活支援施設など、さまざまな支援の仕組みもあります。
妊娠しているようだけど、どうしたらいいかわからない…という時は、一人で抱え込まず、信頼できる大人や相談機関に相談してください。
⇒妊娠についての相談機関はこちら
※特別養子縁組についてもっと知りたい・相談したい方は「フローレンス にんしん・養子縁組相談」など民間の相談機関があるほか、養子縁組と決めていなくても全国対応で妊娠SOS相談を受けつけています。
出産する方向性で決めたら、住んでいる地域の保健センター、市区役所、町村役場に「妊娠届出書」を書いて提出し、「母子健康手帳」をもらいます。自治体によって妊婦検診の受診券や補助券がもらえたり、妊娠・出産に関する様々なサービスについての説明があります。わからないことや不安なことは質問していただいて大丈夫です。
出産まで、定期的に妊婦健診をすることはお母さんと赤ちゃんにとって、とても大切なことです。健康に自信がある人も、必ず定期的な健診をうけましょう。
また、下記の安全な中絶と流産について適切な情報を伝えるためのWEBサイトも参考にしてみてください。
⇒ Safe Abortion(セーフアボーション )Japan Project
4. 妊娠する?しない?
妊娠は、男性の精液に含まれる精子が腟の中に入り、子宮内の卵子と出会うことで受精し、子宮内に着床することで成立します。以下のような行為で「妊娠したかも?」と思う人もいるようですが、妊娠の心配することはありません。
<妊娠しない行為>
- 男女のキス
- 男性の精液を女性が飲む
(※ただし、のど等に性感染症が感染する可能性があるので、定期的な検査をおすすめします) - 男女が一緒にお風呂やプールに入る、トイレの共用
- 一度精液やカウパー腺液(射精前に男性器から分泌される透明な液体、俗にがまん汁とも呼ばれます)がついた手を洗ったり、拭き取った後で、腟内をさわる
一方で、妊娠する可能性がわずかながらある行為についても説明します。妊娠の可能性はかなり低いと思われますが、ゼロではない、という行為です。心配な時や不安な気持ちがあれば、緊急避妊の相談をしたり、妊娠検査薬の検査で確認ができます。
<妊娠する可能性がわずかながらある行為>
※低用量ピルやIUDなど他の避妊法を使用していない場合
- 手にカウパー腺液や精液がついている状況でコンドームを装着し、コンドーム表面についた状態での性行為…手を洗ったり拭いてからコンドームは装着しましょう。コンドームの表裏をまちがえて男性器につけた場合は、新しいコンドームを使いましょう。⇒詳細はコンドームを参照
- 精液がお尻につく…腟内に入らないように拭き取るかシャワーなどで流しましょう
- 素股(男性器を女性の股に挟み、圧迫や摩擦で快感を得る行為)…低用量ピルやコンドームなど避妊の対策をしましょう。
最後に、妊娠の可能性がある行為についても解説します。
<妊娠の可能性がある行為>
※低用量ピルやIUDなど他の避妊法を使用していない場合
- 腟外射精(外出し)、コンドームをつけない挿入行為
- 手や指に精液やカウパー腺液がついたままで、腟内をさわる
- コンドームが途中で外れたり、破れる
- 「安全日」と言われる日や生理中における避妊のない性行為
妊娠が心配な性行為から72時間(3日)以内であれば、緊急避妊という選択肢があります。
⇒詳しくは、アフターピル・緊急避妊を参照にしてください。
5. 妊娠しやすい時期ってあるの?
女性の月経サイクルの中で、排卵日前後の数日間が妊娠しやすい日と言われています。排卵後、妊娠が成立しないとその約2週間後に月経がおきるので、目安として月に1回くらい月経がきている人は、次の月経が始まる約2週間前くらいが排卵日にあたる頃となります。(ただし、あくまで目安であり、実際は月経周期や排卵のタイミングはずれることもよくあります)。基礎体温を計測することである程度予測することができたり、最近は、排卵検査薬が薬局で買えるようになってきました。
逆に、「妊娠しやすい時期」以外は「妊娠しない時期」や「避妊が必要ない時期」ということではないので、まだ妊娠を希望していない方は気をつけてください。
いわゆる「安全日」(避妊しなくても妊娠しない日)はありません。月経のある女性は、たとえ月経不順でもいつでも妊娠する可能性はあると考えてよいでしょう。
6.ライフプランを考えてみよう!
今は子どもを希望しているのになかなか妊娠ができない「不妊」で悩む人も増えています。
妊娠しやすい時期と子どもを望む時期が必ずしも一致するとは限りません。妊娠のしやすさは年齢によっても変わり、女性は30歳をすぎたころから徐々に妊娠しづらくなり、40歳をすぎるとかなり難しくなります。不妊治療での出産率は、 30歳で約20%、40歳で約10% 、42歳で約5%となっています。年齢とともに流産率も上がります。
また、不妊の原因は、女性側だけではなく、男性側にあることや、具体的な原因が分からないということもあります。
子どもを産む・産まないは個人の選択ですが、「将来子どもがほしい」という人は、いつ頃、何人ほしいか、自分の仕事やはたらき方はどうするかも含めて考えてみたり、パートナーとも話してみたりすることが大切です。
将来の妊娠のためにできること
いつか妊娠したい、もしくは興味があっても、今すぐ妊娠したいわけではないという場合でも、できることがあります。
「プレコンセプションケア(Preconception care)」と言って、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことが提唱されています。
●プレコンセプションケアにつながる健康的な生活習慣
①適正体重を守り、栄養バランスを整える
②適度に運動する
③禁煙をする・アルコールは控える
④ストレスをため込まない
⑤ワクチンを接種する(風疹・おたふくかぜ・インフルエンザなど)
などがあります。
参考:国立成育医療研究センターウェブサイト
プレコンセプションケアに関する検診・相談や、プレコン・チェックシートなどの情報発信をしています。
●ブライダルチェック/プレコンチェック
婦人科・産婦人科などで、妊娠・出産や胎児に影響を与える病気・感染症の有無を調べる検査ができます。検査をしておくことで、早めに病気の治療をしたり予防接種を受けるといった対策ができます。男性女性双方でチェック項目があるので、パートナーと一緒に検査を受けることもおすすめです。
費用は1〜3万円ほどと医療機関によっても検査項目含めて差があります。自治体によっては補助金が出るところもあるので、確認してみるのもよいでしょう。
●卵子凍結
卵子凍結とは若いうちに将来の体外受精に備えて未受精卵を採取し、凍結する技術のこと。病気や、加齢による不妊の可能性を低くするための手段のひとつです。ただし、卵子は凍結によって質が低下するとも言われ、将来の妊娠を保障できるわけではありません。
また、採卵には年齢制限があったり、卵子採取の際に副作用が出たりすることもあります。
卵子凍結の相場は25〜35万円ほどで、自治体によっては不妊治療費助成制度の対象となる場合があるので、確認してみるのもよいでしょう。
7.妊娠したらどう変わっていくの?
妊娠中にはとてもたくさんの変化が起こり、個人差はありますが、辛いと感じることもあります。妊娠が分かった時、妊娠中に自分やパートナーの体がどう変化していくかを分かっていると、働き方の調整やパートナーのサポートの仕方などが考えやすくなります。
妊娠の経過
①妊娠初期
0~3週:自覚症状はほとんどありません。妊娠3週で受精卵が着床します。
4~11週:生理が遅れているかもと思い始めます。妊娠検査薬を使えるようになる時期。妊娠6週でつわり(吐き気や嘔吐、食欲不振など)が来ることもあります。出産まで匂いづわり(ご飯が炊けるにおいなど特定の匂いで吐き気を感じる)がある人もいます。
②妊娠中期
12~15週:お腹が膨らみ始め、胎児の内臓ができてくる頃です。妊娠届を出して、母子手帳を受け取り、妊婦健診が開始します。
16~19週:つわりの落ち着きやお腹の膨らみが目立ち始める頃です。
20~23週:胎動(お腹の中の胎児が動くこと)を感じることもあります。貧血や妊娠高血圧症候群が起こりやすくなります。
③妊娠後期
24~27週:お腹の中の胎児の動きが大きくなります。
28~35週:子宮が胃を圧迫し、お腹のはりを感じることもあります。
36~40週:臨月で、出産間近となります。
④出産
妊娠40週頃、陣痛や破水が起こり、経腟分娩(腟・産道を通っての出産)か、帝王切開(医師にお腹を少しだけ切っての出産)によって出産します。
※妊娠週数は妊娠前の最後の月経の1日目を妊娠0週0日として数えます。
出産の痛みってどのくらい?
痛みの感じ方や分娩の進み方には個人差があり、一概には言えませんが、出産の際、胎児を押し出すために起こる子宮の強い収縮や、産道が開く時に痛みを感じます。また、帝王切開の際には、術後に痛みが続くこともあります。
不安や緊張も関連するので、事前にお産の進み方・流れを把握し、お産の合間にはリラックスしたり、助産師や医師の合図でタイミングよくいきんだりすることが大切です。
また、局所麻酔薬や点滴からの鎮痛薬を使うことで、出産の痛みを和らげる「無痛分娩」があります。日本では無痛分娩に対応している医療機関は限られますが、興味のある人は調べてみてください。
出産後に起こる心身の変化
出産は心身に大きな負担がかかるだけではなく、ホルモンバランスの急激な変化や生活リズムの変化等により、産後にもしばらく様々な影響が出ることもあります。産後の体調の変化には個人差がありますが、産後すぐは安静に過ごし、その後も無理せずに体調を考えて生活することが大切です。いずれの場合も悩んだ時は、地域の産婦人科・婦人科や助産師、保健師などに相談ができます。
\たとえばこんな変化が起こることも/
①産後うつ
産後うつとは出産後の数週間、ときに数カ月後まで続き、極端に悲しくなったり、泣き叫んだり、怒りやすくなったり、気分の変動がみられる状態のことで、日常活動や子どもへの関心を失うこともあります。約10~15%の女性に発症すると言われ、原因は妊娠前・中からあったうつ病や経済的な問題、パートナーの不在などから生じるストレス、授乳の問題などがあります。
②マミーブレイン
マミーブレインとは正式な医学用語ではありませんが、出産後に集中力が低下したり、物忘れがひどくなったりする状態のことです。原因はホルモンバランスの変化など様々な説がありますが、産後は睡眠不足で慢性的な疲れが溜まっていることも考えられます。マミーブレインに悩んだ人も、産後1年未満/気付かないうちに回復していたという人が多いそうです。
③抜け毛
産後脱毛症や分娩後脱毛症などと言われる症状で、出産後の女性の8割以上に起こるものです。産後2~3か月頃から非常にたくさん髪の毛が抜けますが、半年~1年程度で元の毛量に戻ると言われています。原因はホルモンバランスの変化やストレス、睡眠不足、栄養不足などがあります。
妊娠・出産関連の手続き
住んでいる自治体で妊娠や出産に関連する手続きを行うことで、様々なサービスや支援を受けることができます。
【妊娠がわかったら】
①母子手帳を受け取る
・母子手帳(母子健康手帳)とは、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のこと。
・病院で妊娠の診断がされたら、市区町村の役所、または保健所・保健センターに行き、妊娠届出書を記入・提出することで母子健康手帳を受け取ります。
※受け取る際に必要なものは自治体によって異なるので、事前にホームページや電話等で確認をしておきましょう。
・自治体によっては母子手帳と共に妊婦健診の補助券などの支援があったり、今後の両親学級などについても説明があります。
②出産する病院の予約
分娩が可能な医療機関が少ない場合は、早めに予約しておきましょう。
③両親学級への参加
・両親学級とは妊娠の経過と体の変化、出産の経過や育児などについて学んだり、相談できたりする場所です。
・検診を受けている病院で開催していなかったり、助産院で出産したりする場合は、地域の保健所へ連絡できます。
④出産育児一時金・出産育児付加金の手続き
・出産育児一時金とは、出産したときに子ども1人につき約50万円をもらえる制度のことです。
・ほとんどの場合は入院中に書類に必要事項を記入しておくと、退院時に出産にかかった費用と出産育児一時金・出産育児付加金との差額分のみを支払うことになります。
働いている人は、産休・育休の手続き、育児休業給付金の申請、社会保険料の免除手続き、出産手当金などの申請もしましょう。
【出産をしたら】
出産後に必要な手続きとして、下記のようなことがあります。産後すぐ一人では難しい時は、パートナーや身近な人にもサポートをしてもらいましょう。
①出生届
②健康保険の加入
③出生通知表の送付
④児童手当の申請
場合によっては、高額療養費の申請、未熟児養育医療制度の申請、ひとり親の場合は児童扶養手当や児童育成手当の申請などもあります。
もし分からないことや不安なことがあれば、市区町村の役所、または保健所・保健センターなどにも相談することができます。
セクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツについて
「セクシュアル・リプロダクティブ&ヘルス(Sexual Reproductive Health & Rights / SRHR)」とは、「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、「人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもをいつ持つか持たないか、何人持つかを決める自由をもつこと」を意味します。
具体的には、「すべてのカップルと個人が、自分たちの子どもの数・出産間隔、出産する時期を自由にかつ責任をもって決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという権利。また、差別、強制、暴力を受けることなく生殖に関する決定を行う権利も含まれる。さらに、女性が安全に妊娠・出産を享受でき、また健康な子どもを持てる最善の機会を得られるような適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる」(「国際保健用語集」より)ことです。
また、最近では、「セクシュアル・ヘルス」の定義として、「性的存在に付随する身体的、 情緒的、 知的、 社会的側面を統合したもので、人格やコミュニケーションや愛情を豊かにし高めるもの。 (中略)このようにセクシュアル・ヘルスの概念は、 人間のセクシュアリティについて積極的に取り組むことを意味する。 またセクシュアル・ヘルスケアは、 単に妊娠・出産や性感染症に関する相談とケアにとどまらず、 人生と人間関係を豊かにするものであるべきである」(「IPPF セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス用語検索サイト」より)とされています。
世界性の健康学会(WAS)では、「性の健康宣言」を提唱しています。
どのようにセクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツを実現していくかは、日本における重要な課題として挙げられます。
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